← 技術コラム(目次)へ戻る

熱収縮チューブとは・収縮の原理

熱収縮チューブ(ヒートシュリンクチューブ)は、加熱することで一定の割合で収縮し、対象物に密着する特殊な樹脂製のチューブです。
この性質はプラスチックの「形状記憶効果(電子線架橋技術)」を利用しています。樹脂に電子線を当てて分子同士を網目状に結合(架橋)させた後、加熱して膨張させ、そのまま冷やして固めることで製造されます。これを再び加熱すると、架橋された網目が元の大きさに戻ろうとする力(収縮力)が働き、チューブが縮む仕組みです。

主な役割と用途

絶縁保護 端子と電線の接続部(圧着部や半田付け部)の金属露出部を覆い、ショート(短絡)や感電を防ぐための電気的絶縁を行います。
物理的保護
(断線防止)
コネクタの根元など、電線が曲がりやすく負荷がかかる部分を補強し、振動や引張による断線を防ぎます(ストレインリリーフ機能)。摩耗や薬品からも電線を保護します。
防水・防食 内側に接着剤(ホットメルト)が塗布された「二重管(接着剤付き)チューブ」を使用することで、収縮時に接着剤が溶け出して隙間を完全に密閉し、水分や埃、腐食性ガスの侵入を防ぎます。
結束・識別 複数のバラバラな電線を一つに束ねる役割や、チューブの色(赤、黒、青、黄など)を使い分けることで、配線の極性や行き先を視覚的に識別しやすくする役割があります。

選び方の重要ポイント(寸法・材質)

熱収縮チューブを適切に機能させるためには、単に太さだけでなく、収縮後の変化や材質特性を考慮した慎重な選定が必要です。

1. 寸法選定
(内径・収縮率)
  • 収縮前・収縮後内径: 被覆する対象物の「最大外径」より通しやすい太さ(収縮前内径)であり、かつ対象物の「最小外径」よりもしっかり小さくなる(収縮後内径)サイズを選ぶのが鉄則です。
  • 収縮率: 一般的なものは「2:1(元の太さの半分になる)」ですが、段差の大きいコネクタ部などには「3:1」や「4:1」の高収縮タイプを使用します。
2. 見落としがちな
「長さ方向の収縮」と「肉厚」
  • 縦収縮(長さの変化): チューブは加熱すると径方向(細くなる)だけでなく、長さ方向にも数%〜10%程度縮む性質があります。これを考慮し、設計寸法より少し長めにカットする配慮が必要です。
  • 収縮後の肉厚: 径が細くなるにつれてチューブの壁(肉厚)は厚くなります。可動部など柔軟性が求められる箇所では、収縮後の肉厚が硬さに影響するため注意が必要です。
3. 材質と特性
  • ポリオレフィン: 最も一般的。柔軟性があり、多くは「難燃性(UL規格等)」を持っています。
  • フッ素樹脂(テフロン等): 耐熱性・耐薬品性・滑り性に極めて優れており、高温環境や特殊な溶剤がかかる過酷な環境で使用されます。
  • シリコン・エラストマー: 極めて高い柔軟性と耐寒・耐熱性を持ち、ロボットケーブル等の可動部に適しています。

【参考】熱収縮チューブの詳しい選定ガイド
対象物の径に対する適切なチューブサイズの計算方法や、材質ごとの詳細な選定基準につきましては、配線結束部材メーカーであるヘラマンタイトン株式会社様の「熱収縮チューブの選び方」ページが非常に分かりやすいため、ぜひご参照ください。

ヘラマンタイトン 技術情報「熱収縮チューブの選び方」を見る(外部サイト)

均一な熱処理と確かな加工品質

熱収縮チューブの加工において、加熱不足は密着不良やズレを招き、過加熱はチューブの焦げや破れ、内部電線の損傷(絶縁体の溶融など)を引き起こします。
イー・エス製作所では、チューブの材質や収縮温度(収縮開始温度・完全収縮温度)を熟知したスタッフが、工業用のヒートガンや専用の加熱炉を使用し、適切な温度と時間で均一な熱処理を行っています。防水仕様の接着剤付きチューブから、特殊な耐熱チューブの加工まで、用途に合わせた最適な処理をご提供いたします。

技術コラムトップへ戻る